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脂質異常症の食事療法

脂質異常症を指摘された方はどのような食生活を送るのが良いか、以下にそのポイントをご紹介します。食事中の油やコレステロールに注目しがちですが、他にも様々な工夫ができます。ご自身の食生活を見直すヒントとして、ぜひご活用下さい。

 

脂質の選び方を工夫し、摂りすぎに注意する

脂質(あぶら)は、太る原因や悪いものというイメージを持たれがちですが、私たちの体にとってなくてはならない大切な栄養素です。エネルギー源としてだけでなく、細胞膜やホルモンの材料にもなっています。ただし、脂質の「種類」や「量」によっては、健康に悪影響を及ぼすことがあります。

ここでは、脂質の基本的な種類と、それぞれが体に与える影響、摂取のポイント、そして実際に「摂った方がよい脂質」と「控えるべき脂質」について、わかりやすく解説します。

避けたい脂質と摂りたい脂質

脂質は構造上の違いから単純脂質、複合脂質、誘導脂質の3つに分けられます。これらの脂質の重要な構成要素が脂肪酸です。細かい定義は割愛しますが、ここでは食事を選ぶ際に重要な飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、トランス脂肪酸について説明します。

  • 飽和脂肪酸(避けたい脂質)
  • 不飽和脂肪酸(積極的に摂りたい脂質)
  • トランス脂肪酸(できる限り避けたい脂質)
1. 飽和脂肪酸(さけたい脂)

飽和脂肪酸は、主に動物性の脂肪に含まれています。摂りすぎると、血中のLDLコレステロール(悪玉)を増やし、動脈硬化のリスクを高めます。

避けたほうが良い食品:

  • 牛・豚の脂身、ベーコン、ソーセージ
  • バター、ラード、クリーム
  • チーズ、全乳(脂肪分の多い乳製品)
  • ファストフード、揚げ物全般

2. 不飽和脂肪酸(とった方がよい脂)

不飽和脂肪酸は、血中のLDLを下げたり、中性脂肪を減らすなどの良い働きを持っています。二重結合という化学構造の数によって一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分かれています。

① 一価不飽和脂肪酸(オレイン酸など)

LDLを下げつつ、HDL(善玉)に影響しにくいため、バランスの良い脂です。

摂ったほうが良い食品:

  • オリーブオイル、キャノーラ油(なたね油)
  • アボカド
  • ナッツ類(アーモンド、ピスタチオなど)

② 多価不飽和脂肪酸(DHA・EPAなど)

血栓を防ぎ、中性脂肪を減らす効果がありますので積極的に摂りましょう。

摂ったほうが良い食品:

  • 青魚(さば、いわし、さんま、まぐろなど)
  • えごま油、亜麻仁油
  • 大豆、豆腐、納豆

3. トランス脂肪酸(避けるべき脂)

人工的に作られた脂で、LDLコレステロールを上げ、HDLを下げる作用があります。健康への悪影響が大きいため、できるだけ摂取を避けるようにしましょう。

避けたほうが良い食品:

  • マーガリン、ショートニング
  • スナック菓子、ドーナツ、ケーキ
  • 一部のインスタント食品、冷凍食品

脂質と上手に付き合うコツ

  • 調理に使う油は、バターよりもオリーブオイルやキャノーラ油を
  • 週に2~3回は青魚を取り入れる
  • 揚げ物は控えめにし、焼く・蒸す・煮るなどの調理法を活用
  • 間食は、ナッツ類(無塩)や果物に置き換える

脂質をすべて避ける必要はありません。大切なのは「何を」「どれだけ」摂るかというバランスです。毎日の食事の中で、少しずつ意識してみましょう。

コレステロールの多い食品に注意する

LDLコレステロールが高い場合は、食事からのコレステロール摂取を200mg/日未満に抑えることが望ましいとされています(※日本動脈硬化学会)。以下の食品はコレステロールが多く含まれるので、過剰に摂取しないように気をつけましょう。

避けたほうが良い食品:

  • 鶏卵(特に卵黄)
  • 魚卵
  • レバーなどの内臓類
  • 乳製品の過剰摂取

食物繊維を積極的に摂り、糖質の過剰摂取に注意する

食物繊維は、余分な脂質の吸収を抑え、排出を促します。脂質異常症では1日25g以上が推奨されます。

摂ったほうが良い食品:

  • 野菜、きのこ、海藻
  • 未精製穀物(玄米など)、豆類、ナッツ
  • 果物(ただし糖質が多いため、食べすぎには注意)

糖質を摂りすぎると、中性脂肪が増える要因となります。白米やパン、砂糖を多く含むお菓子、清涼飲料などの摂取量には注意しましょう。

飲酒量を減らす

動脈硬化性疾患の予防のためには、飲酒習慣の見直しが大切です。多量の飲酒は控え、週に2日は休肝日を設けましょう。アルコールの1日の適正な摂取量はエタノール換算で25g以下と言われています。

エタノールとは?

私たちが飲んでいる「お酒」に含まれる成分のうち、酔いの原因となるのがエタノール(エチルアルコール)です。
飲み物ごとにアルコール度数が異なるため、飲む量は同じでも、体に入るエタノールの量は変わってきます。

飲み物ごとのエタノール25g相当量

飲み物 アルコール度数 25g相当の目安量
ビール(5%) 約5% 中瓶1本(500ml)
日本酒 約15% 1合(180ml)
ワイン 約12% グラス約2杯(200ml)
焼酎(25%) 約25% 約0.6合(100ml)
ウイスキー 約40% ダブル1杯(60ml)

節酒のポイント

  • 毎日飲まず、週に2日は休肝日を作る
  • 一気飲みや連続飲酒を避ける
  • できれば1日1〜2杯(エタノール10〜20g)まで
  • 性別・年齢・体格により適量は異なる。自分に合った量を見つけましょう

食塩の摂取量を減らす

脂質異常症の方にとって、塩分の摂りすぎにも注意が必要です。特に高血圧を合併している場合は、動脈硬化のリスクがさらに高まるため、 1日6g未満の食塩摂取が目標とされています。

減塩は、ただ塩を減らすのではなく、味つけの工夫でおいしさを保つことがポイントです。

  • だしや香味野菜(生姜、にんにく、しそなど)で風味を補う
  • 加工食品や外食は塩分量を確認して選ぶ
  • 醤油やドレッシングは「かける」より「つける」で使用量を減らす
  • 汁物は汁を残す、スープは飲み干さない
  • 「減塩」「うす塩」表示の食品を選ぶ

ちょっとした意識と工夫で、無理なく減塩を続けることができます。脂質とあわせて塩分のバランスにも気をつけましょう。

過食に注意し、適正な体重を維持する

適正な体重の維持は血清脂質の改善につながり、動脈硬化性疾患の予防にも効果的です。総エネルギー摂取量(kcal/日)は以下のように計算できます。

  • 標準体重(kg) × 身体活動量

標準体重の設定ですが、簡易的には現在のご自身の身長(m)×身長(m)×22(標準BMI)で計算できます。下記の早見表へのリンクから、ご自身の身長に見合った標準体重を確認してみて下さい。

標準体重早見表はこちら

標準体重を確認できましたら、そこへ身体活動量を掛け合わせます。身体活動量は軽労作から重労作まで大きく3段階に分かれます。

  • 軽労作 :25〜30
  • 普通労作:30〜35
  • 重労作 :35〜

一般的な働き世代の方で、デスクワークが主でしたら、身体活動量は30で良いと思います。肉体動労の方は35として計算してみましょう。標準体重(kg)× 身体活動量が、あなたの適切な1日の総エネルギー摂取量です。

1日の総エネルギー摂取量を計算した数値に収まるように食事量を調整し、標準体重を維持することで、コレステロールや中性脂肪の数値の改善が期待できます。

まとめ

いかがでしょうか。コレステロールや中性脂肪の異常を指摘された方は、上記のような点に気をつけて生活を送ることで、将来的な脳梗塞や心筋梗塞の可能性を低くすることができます。ぜひ生活の中に取り入れてみて下さいね。

また、お薬や栄養指導なども含めたご相談をご希望の方はお気軽に中沢内科胃腸科医院までご相談下さい。

関連リンク

脂質異常症について

LDLコレステロールと心血管疾患

中性脂肪について

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