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カンピロバクター腸炎について

カンピロバクター腸炎とは?

カンピロバクター腸炎は、カンピロバクターという細菌によって引き起こされる感染性の腸炎です。下痢の原因として非常に多く見られる病気で、日本でも年間を通じて発生しています。

主にカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)とカンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)いう種類の菌が原因で、人に感染すると腹痛や下痢、発熱などの症状を引き起こします。

この菌は主に鶏の腸管に住んでおり、十分に加熱されていない鶏肉などの食品から感染します。潜伏期は平均で3日間です。

典型的なエピソードとして"鳥刺し"や"鳥のたたき"などを摂取した2〜3日後に高熱や腹痛・下痢を呈した場合に、カンピロバクターが原因として疑われます。また、未殺菌の牛乳や汚染された水、下痢をしている動物との接触などからも感染することがあります。

カンピロバクター腸炎の症状

発熱、頭痛、倦怠感

腹痛や下痢といった腸管の症状が出現する前に、インフルエンザのような40℃近い発熱と頭痛・筋肉痛・倦怠感が24時間ほど続くことがあり、これがカンピロバクター腸炎の最大の特徴です。

下痢、血便

下痢は軟便から水様便まで様々で、15%ほどで赤黒い血便が出ることもあります。下痢は平均7日間で自然に改善しますが、便からの排菌は1ヶ月程度続きます。

腹痛

腹痛は部位のはっきりしない腹部全体の痛みが15分程度のサイクルで波を打つように繰り返します。痛みの程度は様々ですが、ときにうずくまるほど痛くなることもあります。カンピロバクターは小腸と大腸のつなぎ目の近くの回盲部と呼ばれる所にも炎症を起こしやすく、右下腹部に強い痛みを認めることがあります。特に下痢を伴わない場合には虫垂炎との区別が難しいことがあります。

しぶり腹

肛門周囲の直腸まで炎症が及ぶと「便意があるがトイレに座っても便が出ない」という症状を認めます。

カンピロバクター腸炎の検査

必要に応じて便培養検査を行い確認します。結果には5〜7日程度を要します。
便中迅速抗原検査キットを用いて15分程度で判定する方法もあります(当院では行っておりません)。

カンピロバクター腸炎の合併症

ギラン・バレー症候群

感染後1〜3週間で神経症状が現れることがあり、ギラン・バレー症候群全体の30〜40%がカンピロバクターに起因するとされています。急速に進行する手足の麻痺やしびれなどが特徴で、このような症状がみられた場合には直ちに専門科(神経内科)を受診する必要があります。

反応性関節炎

発症率は2-3%程度です。下痢の1〜2週間後に足首・膝・手首など複数の箇所に関節痛と腫れが出ます。1週間〜数か月で自然寛解することが多く、解熱鎮痛剤が有効です。

胆嚢炎・胆管炎

腸管から菌が胆道を逆行し、胆管炎や胆嚢炎を認めることがあります。

その他

骨髄炎、髄膜炎、心膜炎、心筋炎などを引き起こすことがあります。

治療

多くの症例は自然治癒するため、水分・電解質補正が基本です。止痢剤(ロペラミドなど)は原則として使用を避けます。抗生物質等の使用は限定的で、症状の程度や持病などの背景に応じて検討します。

抗生物質を用いる場合

  • 重症例(血便・高熱・症状が長期化しているケース)
  • 重症化リスクのある場合(高齢者・妊婦・免疫抑制中など)

予防

  • 鶏肉は中心部まで加熱する(75℃以上)
  • 生肉を触った器具や手はすぐ洗う
  • 未殺菌乳の摂取を避ける
  • 動物(特に下痢をしているペット)との接触に注意する
  • 旅行先での生野菜や水、氷に注意する

発症者は、下痢が治まるまで食品の取り扱いや保育施設の利用を控える必要があります。

まとめ

カンピロバクター腸炎は比較的頻度の高い細菌性腸炎で、多くは自然軽快しますが、重症化や神経・関節の合併症を起こすこともあります。予防には食品の加熱や手洗いなど基本的な衛生管理が非常に重要です。症状がある場合は早めに医療機関を受診しましょう。

監修情報

執筆・監修:中澤 幸史  医師(総合内科専門医・家庭医療専門医)
中沢内科胃腸科医院 院長(総合診療科・内科・胃腸科)
所属学会:日本内科学会/日本プライマリ・ケア連合学会

参考文献

  • クーニャ C B(編),岩田 健太郎(監訳).<strong>シュロスバーグの臨床感染学 第2版</strong>.メディカル・サイエンス・インターナショナル,東京,2024 : 774–775.
  • 小林 謙一郎.「糞便中カンピロバクター迅速抗原検査について」.日本赤十字社和歌山医療センター感染症内科部副部長.臨床検査アップデート 92(69-11)2023 : 16-20.
  • Veronese N, et al. Campylobacter jejuni/coli Infection: Is It Still a Concern? Microorganisms. 2024;12(12):2669.
  • Allos BM.Campylobacter jejuni infection.Calderwood SB, (Ed), UpToDate. Waltham, MA: UpToDate Inc. https://www.uptodate.com (Accessed on November 9, 2025.)

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